プロローグ


それはとても不思議なものだった。

――遥か昔。

とある“神”と呼ばれた者が、人間界の古い遺跡で二つの紋章を発見した。
石の中に人為的に埋め込まれた謎の紋様。
一体、誰がいつ、何のために作ったものなのか……。

この紋章には、この世のものとは思えないほどの強大な魔力が封じ込められている。

“神”は二つの紋章を元に、それを模した八つの紋章を新たに作った。
神の力が封じ込められているそれは≪天紋≫と呼ばれ、
力のある者たちに受け継がれていった。



時は幾千年の歩みを刻み、
神と魔族との争いは苛烈を極め、世界は混迷している。

その日は酷い嵐だった。
神々が住まう空の彼方、神界の片隅で――彼、セイは生まれた。

それはたしかに、暗雲とした世に差し込んだ一筋の光。